4月から靴が資源ではなく燃やせるごみとなりました。市報などでご覧になった方も多いのではないでしょうか?資源から燃やせるゴミへの移行はゴミ減量という意味では後退です。ごみ減量の観点から影響は大きいと思うがその理由、及び、ごみ処理全般における課題と検討状況について聞きました。
市長答弁:やむを得ず区分変更、一方でごみ減量は必要
靴については、年間約10トンを海外へ輸出し、資源化していたが、中国をはじめとする海外の輸入規制により、資源化が困難になったことから、令和2年4月から分別区分を変更し、やむなくごみとして出していただいている状況である。また、ごみ処理全般における課題については、本市の市民一人当たりの排出量では、令和元年度の実績で、多摩26市中3番目に多く、更なるごみ減量が必要だと認識している。このため、現在、減量施策の一つである家庭ごみ有料化及び個別収集の導入方法について、令和4年度の実施に向けて検討を行なっている。
燃やせるごみにせざるを得なかった理由
これまで衣類や靴などは中国などアジア諸国に資源として輸出していました。もちろん、そのほとんどが再利用もしくはリサイクルされていました。が…近年、アジアの各国において輸入規制(特に衣類や靴等の審査基準)が非常に厳しくなり、靴などは、搬入物の約9割がごみとして判断され、全てが返送されるかもしくはごみ処理費用を負担しその対応を図っていたということです。4月から靴が「燃やせるごみ」になったのは輸入規制が厳しくなったことが原因なんですが、それだけでしょうか?海外に輸出することなく国内で資源化する手段はなかったのか?答えはNO。行政回収などで回収した大量の靴の引き取り手はないということです。これが「やむなく燃えるごみに変更せざるを得なかった」の理由です。結果、令和元年度の実績で靴だけで10tが燃やせるごみになってしまいました。資源化率にすると0.04ポイントの低下です。たかが10tですが、武蔵村山市における1人1日あたりのごみ収集量が654gですから、されど10t(1,000,000グラム)です。長年、海外に輸出することで資源化を図ってきたツケが回ってきたと考えても良いでしょう。これからは海外だけに頼らないリサイクルシステムの構築も早急に進めなければならないと考えています。
国内・海外のバランスは偏らず
そうそう、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、医療用マスクなどが国内で供給不足になっていました。政府は製造業の国内回帰を支援する補助金を設け、国内でも民間企業の体制が整いつつあります。これまで海外に頼っていたマスクや不織布の生産は一定量国内で生産されることになるでしょう。しかし、国内であっても海外であっても一方に偏っていてはなりません。11月25日付の日本経済新聞に「マレーシアのゴム手袋最大手、従業員3000人がコロナ感染」という記事がありました。ゴム手袋の世界最大手「トップ・グローブ」で従業員3000人がコロナに感染し、クラスターの発生で国内工場の多くが操業の一時停止や減産に追い込まれていて、納期も遅れが生じているという内容です。クラスターはどこでも起きることですし、災害のことを考えると、国内海外に偏らずバランスを考えてサプライチェーンを構築することがいかに大切かがわかります。国内・海外のバランス、国内でも生産地のバランスを考えないとやはり脆弱になってしまいます。輸入に頼っていたマスクやグローブのサプライチェーンと回収した靴を資源として輸出すること、似ていたので紹介しました。医療用マスクではありませんが、先日、SHARPのマスクを手に入れました。送料含めて一枚80円の少々お高めのマスクですが、安心感があります。閑話休題。
修理して使うことの大切さ
話をごみに戻します。「やむを得ず靴は区分変更、一方でごみ減量は必要」という、市当局の苦悩が見え隠れしている副市長の答弁でした。現在、ごみ収集の有料化も一つの手段として現在、審議会などで議論しています。一方、「市民に向けては、リサイクルショップ及びオークションサイトの利用、修理して「モノ」を繰り返し使うなどの行動を促す仕組みを構築するとともに、廃棄物の減量やリサイクル等に取り組んでいる市内事業者について、認定制度を設けて事業者の紹介」などをして、ごみ減量施策を進めていくということです。靴を題材にこれまでも「モノ」を繰り返し使うなどの提案をしてきた私としては、ヤフオクなどのオークションサイト、メルカリやジモティなどのフリマアプリなどネットの活用、合わせて「修理して使うことにインセンティブを与える」ことを考えてほしいと要望しました。
1人当たりのごみ排出量は…
さて、ごみ処理全般について課題や検討状況も聞いています。現状、武蔵村山市の市民1人一日当たりの総排出量では、多摩26市中3番目に多く、更に、集団回収及び持ち込みごみを除く収集量では多摩26市中2番目に多い状況です。総排出量では、最も少ない市と比べ、191.8g、26市の平均と比較しても、86.2g多い状況です。武蔵村山市で収集した燃やせるごみは小平市にある小平・村山・大和衛生組合のごみ処理施設で焼却処分し、焼却灰などの焼却残渣は日の出町にある東京たま広域資源循環組合の二ツ塚処分場にあるエコセメント化施設でエコセメント製品となり、我々の周りにある道路の縁石などになっています。エコセメントにすることによって二ツ塚処分場に埋立て処分するのは不燃ごみだけとなり、処分場の使用期間を伸ばすことができています。
新たな焼却炉を建設予定
中間処理施設である小平・村山・大和衛生組合のごみ処理施設は、小平市・東大和市・武蔵村山市から排出される3市の燃やせるごみを3つの焼却炉で焼却処分しています。その3つは老朽化しており、今後壊して新しい焼却炉を建設する予定であることは以前紹介した通りです。工事が始まる令和3年以降、他の自治体にお願いをして、焼却処分をしてもらうことになります。他にお任せするとなると、当然、分別徹底や搬入するごみ量は少ない方が良いのは間違いなく、支援をしてくれる自治体や周辺地域の負担軽減も考えていかなければなりません。
たかが10トン、されど10トン
今回は、靴の資源から燃やせるごみへの区分変更という小さな変更を題材に大きな視点でごみや資源物の議論をしました。たかが10tされど10t。チリも積もればマウンテンです。以前も書きましたが、ごみは行政にとって大きな仕事であると同時に人間社会がある限りは考え続けなければならない問題でもあります。靴は国全体の資源化の問題であり、小平・村山・大和衛生組合の焼却炉は武蔵村山市など3市、そして多摩26市で最後となったごみ収集の有料化はどうするのか?武蔵村山市の大きな課題です。一言にごみと言っても課題は山積。一歩先を見た、攻めの取り組みを進めてまいります。
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